平和の心 一頭の犀(さい)の話から

一つのたとえ話を、皆さんにしたいと思います。
皆さん 犀(さい)という動物を知っていますか。犀は、アフリカやインドに住んでいますね。犀は鼻のところに大きな角があります。むかしむかし、一頭の犀がいました。その犀の名前をルディといいます。
ルディ君はいつも「私は完璧で欠点のない動物だ。一番きれいで、一番偉い動物だ」と思っていました。そのため、他の動物を見下して、きびしく動物達のくせや欠点、うわべの姿を、遠慮なくどしどし指摘しました。
犀ルディ君は、自分は完璧であると思いましたから、他の動物に注意する権利と責任があると思いました。ルディ君は一番醜い 一番欠点や不安のある動物は角のある動物だと考えていました。
ですから鹿や山羊にたいして、非常にきびしい注意を与えました。それは角があったからです。

ルディ君は、大きな角が自分にあることをまったく知りませんでした。皆さんご存知の通り、犀の一番目立つところは角ですね。犀ルディ君は、自分の目の間の自分の角が見えませんでした。他の動物達は大きな角のあるルディ君のことを、ひそひそ話で批判していました。ルディ君は、気の強い風でしたから、他の動物達は直接には何も言いませんでした。そしてルディ君を嫌っていました。

ある時、ルディ君は、山深い静かな湖のところに出掛けていきました。そこで水を飲んでいると、上の木の枝から小さい鳥すずめが、きれいな歌声で鳴いているのが聞こえてきました。犀ルディ君は音痴だったので、「おい、醜いあなた、その騒がしい音、うるさい歌をやめなさい。」ときびしく怒鳴りました。すると、一羽の小さなすずめは、勇気を出して答えました。「あなたこそ、一番醜い動物だ。あなたの大きな角を見てください。あなたは馬鹿だ。間違っている。」すると、「皆は、私を完璧だ、立派だと、ほめたたえていますよ」とルディ君は返答しました。小さい鳥すずめは、それに答えるように「ルディ君、あなただけ自分に大きな角があるのを知らないでいるんだよ。湖の鏡を使って、自分の姿を見てください。醜い角が見えますよ。」そう言われたので、ルディ君は、恐る恐る湖の鏡に自分の姿を写し出してみて、それをみました。びっくりして、驚きました。生まれて始めてのショックを受けました。ルディ君は信じられないので、自分の姿を写し出している湖の鏡をその角で壊して、その場から逃げ出しました。

ルディ君は、なかなか角があることが認められませんでした。しかし、考えて私にも角がある、私は醜い動物だと考えてがっかりしてしまいました。その時から、ルディ君は他の動物とは会いたくありませんでした。さびしく山の中をあちこち歩きまわりました。しばらくしてから、もう一度あの湖の鏡の所に帰って、自分の姿を写し出してみました。
ちょうどその時、同じすずめが木の枝から、次のようにルディ君に声をかけました。「ルディ君、誰でも、皆欠点や悪い点、醜い点がありますよ。もし、自分の欠点などを認めて受け入れたら、前よりも立派な動物になることができますよ。自分の醜いところを受け入れることによって、成長することができますよ。ルデ君、自分の欠点や醜いところをうけいれてまた、他の動物の欠点や醜いところを受け入れたら、平和の心をつくることができるよ。そして、平和な動物の社会をつくる事ができるんだよ。」

ルディ君は、勇気をだして、自分の醜いところや欠点をうけいれました。その時からルディの顔のしわは大きな優しい微笑みをたたえていました。そのためルディ君は、動物の仲間に迎えられ、尊敬されるようになりました。それは他の動物達の欠点や醜さなどをありのままに受け入れたからです。皆さん、動物の社会と人間の社会は似ていますね。
これはイエスさまの福音の教えの説明だと思います。

「貴方は兄弟の目にあるおが屑は見えるのに、なぜ自分の目の中にある丸太にきずかないのか、偽善者よ、自分の目から丸太をとりのぞけ、そうすればはっきり見えるようになる。兄弟の目にあるおが屑を取り除くことができる。」( ルカ 6・41~42 )

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